ボルガ川中流で最も発展していた町の1つ、ゴロジェツ。
12世紀、モスクワの町を作ったウラジーミル・スズダリ公
ユーリー・ドルゴルーキーもこの町に縁を持ち
ボルガ川流域の要所として長きにわたって発展した。
中世ロシアの英雄でありロシア正教会の聖人である
アレクサンドル・ネフスキーはこの地で病死した。
17‐18世紀にかけてピョートル一世により
ボルガ川流域で造船業が盛んになり
ゴロジェツの町は工業と商業で最も栄えた。
造船に伴い木彫技術が急速に発達し
家の中を彩るゴロジェツ塗りもこのころに最盛した。
ゴロジェツはニジニ・ノブゴロドから北西へ53km。
タクシーで1時間半から2時間ほどの距離にあります。
『ゴロジェツ塗り』工場は町の中心から少し離れた
ボルガ川沿岸に位置します。
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菩提樹や白樺を素材とした白木は他から買い、
抗菌作用があるとされる松を素材に作る
まな板やパン入れなどは自社で製作しているそうです。
絵付けに関しては一つの作品は最初から最後まで
一人の職人さんが自分でデザインしながら描いていきます。
なのでほとんどのゴロジェツ塗りには製作者の
サインが入っています。
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ゴロジェツ塗りの塩入れ、パンケース、まな板などの製品は
食品が触れる部分にはニスを使いません。
一見、華やかな飾りに見えますが実用を兼ね備えた
キッチン・インテリアなのです。
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工場付属のギャラリーを案内して頂きました。
この見開きパネルは工場の歴史を表現しています。
表のデザインはゴロジェツ塗りの伝統的なデザインを…
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中を開くと工場の創業者や創設期の芸術功労者たちが
仲良くお茶を飲んでいます。
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ギャラリーでは国内外の展覧会で賞を取った
この工場を代表する近現代のアーティストたちの
作品が展示されています。
職人たちはこれらを参考にして新たな自分の作品を
日々製作しています。
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ゴロジェツ塗りのテーマはピョートル一世時代の
この町が最も華やかだったころの風俗を写し取っています。
家族や若者たちがそぞろ歩きを楽しんだり、
夜のティーパーティーを催したり。
現代のロシア人が見ても馴染み深い風習なので
明るいトーンと共に懐かしさを感じるデザインが
ゴロジェツ塗りが多くの人に愛されている所以のようです。
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今回工場を案内してくれたナタリア・プリバロフスカヤさんも
外国にも招待される一級のアーティストでした。
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第二次世界大戦時に描かれた飾りパネル。
当時の有名なロマンスの歌詞を表していて
下は前線で戦う兵士たち、
上は夫や恋人の帰りをまつ女たちを表現しています。
と~っても素敵じゃないですか?
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ゴロジェツ塗りと言えばみんなが口をそろえて言うのが
「プリャールカの底」。
プリャールカとは昔の糸紡ぎの道具なのですが
ゴロジェツ唯一と言っていいほどの特徴は
作業中に女性が座る下の部分に絵を描いているところ。
興味ある方はモスクワの博物館のコレクションを紹介した
過去のブログで他の地域との違いを見比べてみて下さいね!
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絵を描くのが昔から得意だったゴロジェツの女性たちは
よりスペースが広い下の部分に絵を描いたのですって。
上の部分が壊れるとそのまま壁に備え付けてタオル掛けにして
台所を飾ったそうです。
本当にゴロジェツの女性たちはおしゃれですね~♪
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ゴロジェツはトゥーラやアルハンゲリスクと並んで
プリャーニクという焼き菓子で有名です。
この地のプリャーニクは木彫が盛んなことを生かした
木型で作った様々なサイズやデザインで人気を博したそうです。
昔の木型は今でもあちこちの博物館やイベントに
引っぱりだこなのだそう。
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『ゴロジェツ塗り』工場では塗り物と木彫民芸品と
イコン製作を行っています。
これは木彫技術の一つを表したもので
様々な異なる種類の木材をはめ込んで
ゴロジェツの代表的なデザイン、馬と鳥を描いています。
この町では後継者育成に町として取り組み
小学生のうちから授業の中で
ゴロジェツ塗り、木彫、イコンを描くことに触れされせ
卒業後さらに専門課程に進む若い世代を後押ししています。
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