2014年5月8日木曜日

買付けの旅/ゴロジェツ塗り

ニジニ・ノブゴロドが発展する以前、
ボルガ川中流で最も発展していた町の1つ、ゴロジェツ。
12世紀、モスクワの町を作ったウラジーミル・スズダリ公
ユーリー・ドルゴルーキーもこの町に縁を持ち
ボルガ川流域の要所として長きにわたって発展した。
中世ロシアの英雄でありロシア正教会の聖人である
アレクサンドル・ネフスキーはこの地で病死した。
17‐18世紀にかけてピョートル一世により
ボルガ川流域で造船業が盛んになり
ゴロジェツの町は工業と商業で最も栄えた。
造船に伴い木彫技術が急速に発達し
家の中を彩るゴロジェツ塗りもこのころに最盛した。

ゴロジェツはニジニ・ノブゴロドから北西へ53km。
タクシーで1時間半から2時間ほどの距離にあります。
『ゴロジェツ塗り』工場は町の中心から少し離れた
ボルガ川沿岸に位置します。

菩提樹や白樺を素材とした白木は他から買い、
抗菌作用があるとされる松を素材に作る
まな板やパン入れなどは自社で製作しているそうです。
絵付けに関しては一つの作品は最初から最後まで
一人の職人さんが自分でデザインしながら描いていきます。
なのでほとんどのゴロジェツ塗りには製作者の
サインが入っています。



ゴロジェツ塗りの塩入れ、パンケース、まな板などの製品は
食品が触れる部分にはニスを使いません。
一見、華やかな飾りに見えますが実用を兼ね備えた
キッチン・インテリアなのです。

工場付属のギャラリーを案内して頂きました。
この見開きパネルは工場の歴史を表現しています。
表のデザインはゴロジェツ塗りの伝統的なデザインを…

中を開くと工場の創業者や創設期の芸術功労者たちが
仲良くお茶を飲んでいます。

ギャラリーでは国内外の展覧会で賞を取った
この工場を代表する近現代のアーティストたちの
作品が展示されています。
職人たちはこれらを参考にして新たな自分の作品を
日々製作しています。

ゴロジェツ塗りのテーマはピョートル一世時代の
この町が最も華やかだったころの風俗を写し取っています。
家族や若者たちがそぞろ歩きを楽しんだり、
夜のティーパーティーを催したり。
現代のロシア人が見ても馴染み深い風習なので
明るいトーンと共に懐かしさを感じるデザインが
ゴロジェツ塗りが多くの人に愛されている所以のようです。

今回工場を案内してくれたナタリア・プリバロフスカヤさんも
外国にも招待される一級のアーティストでした。

第二次世界大戦時に描かれた飾りパネル。
当時の有名なロマンスの歌詞を表していて
下は前線で戦う兵士たち、
上は夫や恋人の帰りをまつ女たちを表現しています。
と~っても素敵じゃないですか?

ゴロジェツ塗りと言えばみんなが口をそろえて言うのが
「プリャールカの底」。
プリャールカとは昔の糸紡ぎの道具なのですが
ゴロジェツ唯一と言っていいほどの特徴は
作業中に女性が座る下の部分に絵を描いているところ。
興味ある方はモスクワの博物館のコレクションを紹介した
過去のブログで他の地域との違いを見比べてみて下さいね!

絵を描くのが昔から得意だったゴロジェツの女性たちは
よりスペースが広い下の部分に絵を描いたのですって。
上の部分が壊れるとそのまま壁に備え付けてタオル掛けにして
台所を飾ったそうです。
本当にゴロジェツの女性たちはおしゃれですね~♪

ゴロジェツはトゥーラやアルハンゲリスクと並んで
プリャーニクという焼き菓子で有名です。
この地のプリャーニクは木彫が盛んなことを生かした
木型で作った様々なサイズやデザインで人気を博したそうです。
昔の木型は今でもあちこちの博物館やイベントに
引っぱりだこなのだそう。

『ゴロジェツ塗り』工場では塗り物と木彫民芸品と
イコン製作を行っています。
これは木彫技術の一つを表したもので
様々な異なる種類の木材をはめ込んで
ゴロジェツの代表的なデザイン、馬と鳥を描いています。
この町では後継者育成に町として取り組み
小学生のうちから授業の中で
ゴロジェツ塗り、木彫、イコンを描くことに触れされせ
卒業後さらに専門課程に進む若い世代を後押ししています。